ニーチェの茶目っ気ぶりご紹介


 

遊ぶ子モード

ニーチェをよくご存知ない人は、ニーチェと聞くとどういう想像をされますか?

哲学者で気難しい感じの人、天才と狂人は紙一重で遂に気が狂ってしまった人、『ツァラトゥストラはかく語りき』での「超人」を発明した人、よくわからない人(苦笑)などでしょうか?

 

いえ、私もそれほど詳しいことは知らないのですが、ブログでちょくちょくニーチェを引用している手前、今日はご存知のないかたに少しニーチェのご紹介をば。WIKIに載っていないような一面を。

ニーチェの主著は『ツァラトゥストラはこう語った』ですが、以下、ニーチェ本人による自著紹介を引用します。

ちなみに、ニーチェが発狂してしまったのは1889年1月で、それまでは、ニーチェの評価は低く、『ツァラトゥストラ』の評判も良くなかった時期です。

結局、ニーチェは自分が正常な時代に無名であり続け、発狂後、一気に有名になってしまったのですが。以下の引用は1888年10月~12月頃に書かれた最後の著作『この人を見よ』からです。

 

私の著作の中ではツァラトゥストラが独自の位置を占めている。私はこの一作を以って、人類に対し、これまで人類に与えられた中での最大の贈り物をささげたことになるだろう。

数千年の彼方にまで響く一つの声を持つ同書は、この世に存在する最高の書、文字通り高山の空気を湛(たた)えた書というだけにとどまらない。

――人間という事実全体がこの書の途轍(とてつ)もなくはるか下の方に横たわっているのだが――これはまた、真理の奥底にひそむ豊饒潤沢(ほうじょうじゅんたく)の中から誕生した最深の書であり、その中へ鶴瓶(つるべ)を下せば、必ずや黄金と善きものとが満載して汲み上げられて来る一つの無尽蔵の泉である。

(西尾幹二訳 新潮文庫『この人を見よ』)

大袈裟でしょ!!(苦笑)
出版から3年以上経って、さっぱり売れていないのに。

だいたい本のタイトルからして『この人を見よ』ですよ?
中二病ですか(苦笑)

この本をどう読むかも人それぞれだと思いますが、私は、5分の1くらいは笑いながら読んでいました。というのも、ニーチェ自身、リラックスして皮肉を混ぜながら自虐的に書いていると思われる部分が多いからです。

私は他人に反感を持たれるようにする術がどうしても呑み込めない。(中略)自分で自分に対し反感を抱いたことさえついぞないのだ。

ダウト(嘘だ)!(苦笑)

誰よりも私が女性の理解者であると、彼女たちは感じるだろうと思われるのだが?

と言った同じ口で、

女は男より、言いようもないほどに邪悪である。

と言い(苦笑)、また、

ひょっとすると私は「永遠に女性的なるもの」の機微に通じた最初の心理学者かもしれない。女という女はみな私を愛してくれる。――これもべつに今さらの話でもあるまい。

ダウト(嘘だ)!(苦笑)

ニーチェ(38歳)が片思いで恋したルー・ザロメ(21歳)にプロポーズを断られた以外(ザロメはロシア出身の将校の娘ですのでカトリックの可能性が高く、婚前に性的関係にはなっていないと思われます)、ニーチェの女性恋愛歴はゼロでした。風俗へは行っていたようですが。(写真右端がニーチェ、左端がザロメ)

そんなニーチェなので、ニーチェの女性観について女性読者のかたがたは怒らないで憐れんであげてください(苦笑) まあ19世紀のヨーロッパですしね。

 

この書におけるニーチェの自虐っぷり、自著と自分の大げさな評価については、巻末の解説で西尾幹二さんが、ニーチェの演技に読者は騙されないように と書いています。

『ツァラトゥストラ』についての、ニーチェからのヒントも多く書かれていますので、『ツァラトゥストラ』に中途挫折した人、何を言っているのかほとんどわからなかった人、一度だけ読んで「ふーん」で終わってしまった人に、『この人を見よ』をお勧めしておきます。

税込みで497円。

私の知る限りですが、翻訳者の西尾幹二さんは日本人で最もニーチェを研究された碩学ではないでしょうか。名訳だと思います。

 

ニーチェは他の自著についてもPRしていますので、最初の入門書としても良いかもです。

『曙光』という本については、

この本をもって私の道徳撲滅キャンペーンが開始される。

撲滅キャンペーンって(苦笑) ほかにもありまして、簡略抜粋しますと、

『人間的な、あまりに人間的な』は一つの、危機の記念碑である。

『善悪の彼岸』は一つの、貴人の学校である。

『道徳の系譜は』を構成している三論文は、表現、意図、人の意表を衝く技において、おそらく過去に書かれた本の中で、最も不気味なものであろう。

『偶像の黄昏』は一個の、笑うデーモン(魔神)である。

『ヴァーグナーの場合』を正当に理解して頂くためには、読者は口を開けた生傷に悩むように、音楽の運命に悩むのでなくてはならない。

 

エー、、、関西ふうにツッコミ入れたい気分まんまんですが、そこはちょっと遠慮いたしまして、劇画的ドラマティックに読むのもよいでしょうし、私のようにツッコミ入れながらけらけら笑いつつ読むのもよいでしょうし、紅茶やコーヒーのウンチクなどもあってエッセイ的にどこからでも読める『この人を見よ』でございます。

よほど見てもらえなかったんだなあ(苦笑)

 

今日のアイキャッチ画像は、ニーチェの最も難解な『永遠回帰思想』が閃いたとされる、スイスのシルヴァプラーナ湖を見下ろすロープウェイらしいです。

ああ、行ってみたい。