『新・観光立国論』についての議論(3)


 

谷の人モード

『世界一訪れたい日本のつくりかた(新・観光立国論 実践編)』

前の記事で第1章から第7章までのタイトルとサブタイトル、要約ポイントを抜粋しました。各章には更に細かいポイントがあって、その多くに論拠となるエビデンスが掲載されています。

さて、これはどんな本を読んでいてもそうなのですが、なるほど、ふむふむ、そのとおりだと納得するだけでは何の発展性もありません。読み終わってしばらくは記憶に残りますが、部分部分の各論を思い出すことが多いと思います。全体像の総論ロジックについて明らかにしておくことで理解と記憶と創造が進むと思います。

今日は同書におけるアトキンソン氏の論理構成を明確化します。章立てはほぼ無視し、全体像から彼のロジカルシンキングじたいも学んでみます。

 

1.日本は観光産業を基幹産業にすべき

総論テーマです。世界全体で観光業は第三位の基幹産業となっており、平均でGDPの10%を占める。現状で日本は7%であり潜在能力から言えば平均を大幅に上回って当然。

 

2.観光者数ではなく「観光収益」にフォーカスする

いかに観光客一人あたりの観光支出を増やすかを考える。

 

3.「誰に」観光支出してもらうか

欧州人は時間をかけて遠くから来日するので滞在日数が長い。統計によるとドイツ人が一人あたりの観光支出が最も多いのに来日数が極端に少ない。「遠方から来る、滞在期間の長い、金払いの良い上客」をターゲットにする。

 

4.「何に」対して支出してもらうか

宿泊費、食費、買い物、ナイトライフ、スポーツ、文化鑑賞などがある。日本は確かに文化の見所があるが偏り過ぎている。日本の強みである「自然」の観光(例えば国立公園など)についてしっかりと整備し力点を置く。神社仏閣などの文化の鑑賞には大して時間を使わない。自然の観光には長期滞在が必要になる。

 

5.「どのように」楽しんでもらうか

パンフレットなど翻訳、通訳ガイドの整備。現地で多様な企画の提案ができるコンシェルジュサービス。マニュアルどおりでなく応用のアドリブで要求にこたえられるホスピタリティ能力の向上。リピーターになってもらうことや帰国後の口コミ紹介での新規顧客開拓のためには、大いに楽しんで帰ってもらうことがすべて。

 

6.観光産業推進のための協力体制強化

政府、地方自治体がもっと積極的になること。観光業のすそ野は広く、非常に多くの産業が豊かになる可能性が高い。

 

 

上記の論理構成になっており、そのひとつひとつについての論拠をエビデンスとして提示しロジカルに語っています。(誰の論にも見られる論理の飛躍はごくわずかです)

私はアトキンソン氏が著した 『新・観光立国論(2015年)』 『新・所得倍増論(2016年)』 『日本再生は生産性向上しかない(2017年6月)』 『世界一訪れたい日本のつくりかた(新・観光立国論 実践編 2017年7月)』 の4冊を読みました。彼の考えかた、論建て、エッセンスは4冊を通じてある程度理解できました。

否定や批判するところはありませんが、ここからの自分自身の議論は別にあります。

総論テーマについては全くそのとおりで何かを加えることも応用するところもありません。観光収益にフォーカスするのも尤もなところです。他方、「誰に」「何を」「どのように」に関してはもっと膨らませることができると思いますし、対象を違うものにしても面白いと、対象のアイデアが浮かんでいます。

リピーターにかんしては全く別の角度から、「観光」の枠に入らないものも魅力になるのかなと考えています。例えば「人」です。新しい人との出会いは旅の目的になりますが、これからは「会ったことのある人との再会」に光を当てても面白いのかなと。

そして、私たちがアトキンソン氏から素晴らしいアドバイスを受けたことを思えば、世界各国に暮らす人たちに、その国の人たちが観光に何を求めているかを教えてもらって、と言いますか、プロジェクトスタッフとして来日してもらって観光事業を一緒に創造してもらう、というイメージが目に浮かびました。その際には特に、SNSのネットワークが活躍すると思います。

本当に観光産業のすそ野は広いので、国民全体が一丸となって協力し、観光業を盛り上げてゆくべきでしょう。日本全国どこでも海外の人たちを受け容れられる素地があると思いますし、老若男女関係なく誰でも携わることのできる産業です。

アトキンソン氏の論理力は素晴らしいのは当然として、全体として付け加えるのならば、未来に希望のあるイメージ、明るい将来ビジョンを、例えば海外からの来日客が増えることで、彼らと日本の子どもたちとが接する機会が生まれ、目をきらきらさせて大きな世界を感じられるイメージを写真や動画で表現したり、夢ある語り口調で表現したり、そうした手法での国民へのプレゼンテーションを行って、ムードを作りあげてゆくことができるといいなと思っています。