星の王子さま(4)―Solitude

(2)では Only One に触れたが、今回は角度を変えて「孤独」というテーマをとりあげる。『星の王子さま』の作品全体に感傷的な情緒を感じる人が多いかと思う。翻訳者が作品に寂しさを感じ感傷を意訳に織り交ぜている面もある。ユング派心理学者のM.L.フォン・フランツもその一人で、彼女は作者のサンテグジュペリについて次のように述べている。 一般にある種の残忍さ... Read More

星の王子さま(3)―Creativity

地球上の〈ぼく〉と星の王子さまは、飲み水を切らし砂漠の中の井戸を求めて歩き続ける。日が暮れて夜になってしまう。 「星たちは美しいね、見えない一輪の花のおかげで・・・」 「もちろん」とぼくは答えた。そして話すのを止めて、月光の下の砂の皺(しわ)を眺めた。 「砂漠は美しいね・・・」と王子さまはつけ加えた。 まさしくそれは本当だった。ぼくはずっと砂漠が好きだった... Read More

元旦にあたっての幸福論

幸福であることが他人に対しても義務であることは、十分に言われていない。幸福である人以外には愛される人はいない、とは至言である。しかし、この褒美が正当なものであり当然なものであることは忘れられている。不幸や倦怠や絶望が、われわれすべての呼吸している空気のなかにあるからだ。そこでわれわれは瘴気(しょうき)に耐え、精力的な手本を示していわば共同生活を浄化する人々... Read More

星の王子さま(2)―Only One

今日の記事では星の王子さまの核心にいきなり踏み込む。 表題の『Only One』でなんとなく解る人はいるに違いない。しかしそのなんとなく解った人の期待を私はたぶん裏切る。   本題に入る前に、書を味読する際には一つの視点から理解しようとする方法と、多数の観点(視点ではなく)を混在させながら感じる方法とがあることを確認しておく。 『星の王子さま』で... Read More

星の王子さま(1)―Prologue

『Le Petit Prince (星の王子さま)』 Antoine de Saint Exupéry サンテグジュペリ(1900-1944)作   1943年に出版されたこの書は現在、200か国以上の言語に翻訳され、世界的なロングセラーとして多くの人たちに愛読されている。日本語版も20社を超える出版社から刊行されており、それぞれの邦訳を楽しむこ... Read More

リベラリズム考(11)―新構想

今回が本シリーズのラストの記事となります。   新しいリベラリズムを構想する。 個人主義と共同体主義の公正、自由と正義、自由主義の他律化など、相反する価値が混在しているリベラリズムは下手をすれば社会混迷の原因になりかねない。克服すべき点は多いがもっとも現実的な「寛容のパラドックス」を題材に、新しいリベラリズム構想を練っていくことにする。 &nbs... Read More

リベラリズム考(10)―概括

今回のシリーズで、リベラリズムについての要点をある程度はあきらかにすることができたと思う。しかし、遠く2500年前の古代ギリシア時代に淵源をもつ、リベラリズムの歴史における深淵の一端をうかがえたに過ぎない。本格的な独自考察は今後じっくりと進めるつもりです。ジョン・スチュアート・ミルの『自由論』、アイザィア・バーリンの『自由論』、ジョン・ロールズの『正義論』... Read More

リベラリズム考(9)―批判

リベラリズムには多面的な主張があることが解ってきた。 自由に境界を超えてゆこうとすること、現状の価値を理性の力によって変革しようとすること、進歩を良いこととすること、先入観の排除および事実と分析、個人主義と自律、他者の個人主義的主張を理解し認める寛容、公正としての正義など。 19世紀よりこうした多面的価値観が交錯しながら、つまりある面とある面では矛盾を抱え... Read More

リベラリズム考(8)―正義

リベラリズムの淵源である「啓蒙思想」は、理性の光によって公正な社会を啓(ひらく)くことであった。では、公正とはいったい何か。さっそく理性の光で照らし、リベラリズムの本質と「正義」との関係を掘り下げよう。   現在の日本でリベラルの権威は誰かと問えば、井上達夫東大教授の名が挙がるだろう。井上氏によれば、リベラリズムとは正義主義だという。 井上氏が東... Read More

リベラリズム考(7)―自律

前記事の後半で言及した「自律」については、個人主義において重要な位置を占めると思うのでもう少し掘り下げてみたい。 まず、西尾幹二氏の言葉を引く。 ことさらに社会的意識を標榜せずとも、ただ「個人」であることによって、じゅうぶん社会化された個性を発揮できるというのが真の個性の意味なのである。(中略) 「個人」が自律的であるということは、「社会」からの解放や自由... Read More

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