無意識による人格形成


 

夜の人モード

今日は結論を先に書きますが「人格は無意識内で形成される」というのが本稿での主な主張です。

前の記事までに「構え」と「ペルソナ」の重要性について考えた。ここでは、人の心における、構えとペルソナの根源について分析し、構成し直してみたい。

 

1.主体の資質

(1)価値観の生成

主体(人の心)の資質を大きく大別すると、心理学者のほぼ一致した見解として、生得的なもの(遺伝的なもの)と習得的なもの(生後の体験によって得たもの)に分けられる。

次に習得的なものを分解する。身体的体験、感情的体験、知性的体験、感性的体験の四つの根源に、私は分ける。もちろん複数の体験を同時に体験していることも日常茶飯事だ。一つ一つの詳細については長くなるのでここでは省く。

私たちはこれらの体験に価値を付与する。人は常に、相当な量の価値付けと価値の塗り替えを行っている。無自覚に。

ではこの価値付与と価値変容のメカニズムはどうなっているのだろう。私は、(2)の最終部分で述べる「構え」がメカニズムの主軸になっていると考える。

 

(2)「理」「感」「質」の形成と変容

さて、この四つの体験および付与された価値群のうち、一部の知性的なもの以外は、意識的に現実感覚することは不可能である。そうしてみるとほとんどの体験と価値は無意識の中に沈み、蓄積されていることがわかる。

無意識内に蓄積された体験と価値は無意識内で化学反応を起こし、次の段階では、「理」「感」「質」の三要素へと変容すると私は考える。

「理」とは、見識、智恵、論理展開力、計算力などの知性的能力の形成。「感」とは、情操、審美眼、空間把握力など感性と情感力、身体性の形成、「質」とは、例えば職人気質、親分肌、楽天的(悲観的)など性質的性格の形成である。生得的(遺伝的)資質も混合される。

意識上では、”その情報” に対しての、”その場” でのインプットとアウトプット、および内省的考察しかできない。能力や性質は時間をかけた習慣性をもって習得され形成される。すべて無意識のなかで。

私はこの「理」「感」「質」の傾向、および(3)の自我欲求(特に習慣的なペルソナ)、2.主体の状態、3.客体の状態、この統合によって「構え」が造られると考える。

「構え」によって創造された「ペルソナ」が習慣的になれば、主体の資質に大きな影響を与え「構え」は循環的に変化する。

 

(3)人格と自我

「理」「感」「質」を統合した全体の個性を、われわれは人格と総称する。

よって人格形成とは「理」「感」「質」の形成のことであり、人格形成はすべて無意識の中で行われるとなる。

人格内からの自然欲求、および客体に対する内在的欲求が顕現される人格内の一部(ごく僅かな一部)のことを、自我と呼称する。自我はペルソナを直接的に創造する。ユングは自我をコンプレックスとほぼ同値であるとした。

自我については稿をあらため後日考察する。

 

2.主体の状態

現実の主体の状態は刻一刻と変化する。身体的に不健康であったりおなかがすいていたり、何か気にかかることが重くのしかかっていたり、数日後にうきうきする予定が入っていたり、無意識が多くを支配するとき(例えば睡眠中)でも、主体の状態は変化している。

現実の状態には、睡眠中の夢の中を含め、すべて「構え」がある。

状態の変化によって、今の構えから即座に次の構えに変更しようとするはたらきが無自覚に生じている。

主体の状態は主体の資質から多くが造りだされるけれど、主体の資質は、主体の状態が続くこと、または強い状態の変化によってこちらも影響を受ける。

「構え」によってアウトプットされたものは客体となって自分へ戻って来る。例えば声を荒げ怒った人が自分のアウトプットに自分が反応し、更に興奮して怒るというのはよくある光景だ。悲しみに暮れて涙をボロボロ流して声をあげて泣けば、自分への慰撫となって一時的に悲しみは収まってくる。次の新しい「構え」が自動的に造られている。

 

3.客体の状態

現実および未来に想定される外部環境、すなわち主体の外側にあるすべての客体においても状態は刻一刻と変化する。ここでいう客体とは、自然環境的なもの、社会環境的には対人的なものや大衆に渦巻く世論の空気など。主に五感で感覚的に捉える対象。

客体の状態およびその変化は、常に、主体の状態と主体の資質に影響を与え続けている。

 

今日の論考は、前の記事までで学んだこと考えたことをまとめ、自分なりに仮説として組み立てたものです。人格形成についての論理は大海原のように膨大なものであって、私はそこへ漕ぎだした一隻のボートに過ぎず、自分の能力をはるかに超えた領域にたいする稚拙な仮説だということは自覚しています。

内省はしても未熟さは気にせずに、よく学び、よく考え、稚拙な仮説をブラッシュアップしていこうと思います。

無意識は可能性に満ちています。

 

 

TOP
Copyright © 2017-2023 永遠の未完成を奏でる 天籟の風 All Rights Reserved.