観念世界の空間創造


前の記事を少し補足しておこう。実在世界なくして観念世界はないと書いた。なぜなら、観念世界に意味と価値をもとに表象を形成するには、「概念」「言語」「価値観」「論理」といった材料が必要であり、材料についての十分な理解も必要であるからだ。これらの材料と、その理解を手助けしてくれる他者は文献を含めて、自分の環境としての実在世界に存在している。観念世界は随時更新されるが、自分の知らない新しい材料は実在世界から提供を受ける。ゆえに、観念世界は実在世界から創られると言える。

そのようにして創られた観念世界に、私たちは幾つもの「空間」を想像力によって創造している。無自覚に創造しているから気づいていないだけだ。その幾つもの空間は小世界と言い換えても良いかもしれない。どのような「空間」を創造しているのかについて分析し以下に分類する。但し、空間の種類、空間の形象、空間の広さや奥行きなどについては、個人の想像力に全面依存するため個人差は非常に大きい。

 

観念世界の創造空間

1.物理的空間

三次元的な停止している空間。物理的な環境や場所を想像し、地理的な特徴、建造物、風景などを観念世界に再現する。このような想像空間は地図、風景画、建築設計などに関連する。

2.時間軸的空間

まず過去を見つめ、研究者の文献などをもとに歴史空間を想像する。その歴史の時間が経過していくなかでの物語を想像力を駆使して創造する。「今」においても時間経過の「流れ」を意識し、「今」起きている物語を推理し想像する。過去から「今」の延長上に未来に起こることを想像する。時間軸的な想像空間は、他の空間と複合的に創造されることが多い。

3.社会的空間

地球人類全体を俯瞰する空間から1対1の対人空間まで、コミュニティー内における人間関係やコミュニティー全体的な状況を把握し表現するための空間を創造する。国家や地域共同体、会社などの法人、趣味の集団、思想など価値観的集団、友人、家族などが含まれる。コミュニケーションや対人関係の想像に関連する。

4.自然環境空間

大自然の営み、気温や気圧、太陽、月、大気、海水、雲や雨、地震や台風などの自然災害、ウイルスや細菌、植物を含めたあらゆる生物、そうしたあらゆる大自然のダイナミズムを自分の環境としてとらえ空間を創造する。

5.抽象概念的空間

哲学に代表されるすべての学問における抽象的な概念を、視覚的に把握し展開し、表現するための想像空間を創造する。数学的な概念、哲学的なアイデア、科学の理論、複雑なプロセスなどを含む。例えば、このウェブサイトにおける断想記事のほとんどは、抽象概念的空間をつくり考察を展開している。

6.経済的空間

個人としては自分の仕事としての経済活動上、あるいは家計上、収入と支出や資産と負債の数値と時間経過における流れを把握し、経済的空間を想像する。或いは会社や取引先など全体の経済空間や、国家レベルの経済空間、地球レベルのグローバル経済空間、それらを推測し推定する判断によって、経済的な空間とダイナミズムを想像力と使ってあらゆる経済空間を創造する。

7.心象的空間

感情や感性によって空間を創造する。心象的な想像空間では、幸福、悲しみ、緊張などの感情や、アイデアや記憶の状態を表現する。

8.仮想空間

インターネット上でのオンラインゲームやメタバース、テキストでやりとりされるSNSなど、バーチャルリアリティーの仮想環境を想像力によって空間を創造する。ここでは仮想の場所やキャラクターを観念世界に作り出す。

9.空想空間

架空の世界やファンタジーの領域を創造する空間。既に他者によって創作された小説、制作された映画などの世界観に没入する。或いは自分の空想によって物語を創作し、空想空間を創造する。

10.宗教的空間

ひとつの宗教内で創作されている物語や宗教教義を、自分の観念世界にそのまま再現することを試みる。そうして世界観空間を創造する。信仰者はその空間が実在するということを信じる。既に創造されている世界観ではあるが、概念の言語化であるため完璧はなく、多くの欠けている部分や誤っている部分については自分の想像力によって世界観を補正する。みずから新しい宗教を立ち上げる宗教家は、自分の想像力によって既存の宗教を改変したりゼロから組み立てるなどして宗教的世界観を創造する。

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次の記事では、創造された空間における視点と視座について検討する。

 

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