無意識の応用と個人的実用化


 

夜の人モード

私が無意識(深層心理学/分析心理学)を研究しているのは何かの目的があってのことではありません。好奇心だけかと言えばそういうわけでもない。動機としては、「何かがある、閃きに繋がるものがきっとある」や「自分の中にある何かの考えとマッチングして新しい何かを創造できそう」という直感的なものがある程度です。

しかし結果的に仕事の役に立っているのはほぼ間違いない。自分の外側に展開される世界、対人的鑑識眼であるとかビジネスモデルの構築であるとか。

本記事では「自分を変える」ことに役立つ無意識論の応用とその実用化について考察する。

 

ユングは「心の構え」が「ペルソナ」をつくり、その「ペルソナ」がまた、自分の人格へと影響を与え、人格を変えていくと述べている。では、その「心の構え」はどういうメカニズムで出来るかと言えば、個人固有の「心の機能」によるとした。

心の機能とは、思考・感情・感覚・直観の4タイプ。

これに内向性と外向性を組み合わせて8タイプの性格傾向について論じている。ここに合理性・硬直性と非合理性・柔軟性の2傾向を組み合わせた16タイプの性格自己診断がネットにごろごろ出回っている。

私を例にとろう。

ネット上にあるユング系の16タイプではどのテストをやってもENTP型になる。ネット上の手垢のついた解説よりも、『タイプ論』からユング自身の説明を引いてみよう。他にも私と同じ外向的直観型の人がいるかもしれない。(統計的にはENTP2~5%)

 

外向的直観型

直観型の人が向かうのは、皆に認められるような現実価値を見つけられる方角ではけっしてなく、つねに、可能性が存在する方角である。彼はこれから芽を出すものや将来の見込みのあるものに対して優れた嗅覚をもっている。彼は、昔から存在し基盤もしっかりしており皆に認められて安定しているが、しかし限られた価値しかもっていない事柄には目もくれない。彼はつねに新しい可能性を追い求めているため、安定した状況の中では息がつまりそうに思える。彼はたしかに新しい対象や方法を手に入れるときは懸命に、時には異常なほど熱狂するが、いったんその広がりが確定してもはやそれ以上の著しい発展が望まれないとなると、たちまち愛着をなくし、見たこともないようなそぶりで冷たく見捨ててしまう。

(中略)

直観型の人の道徳性は知的でもなく感情的でもない彼自身の道徳、すなわち自らの直覚を信頼しその力に進んで身を委ねることである。周りの幸福に気を配ることなどほとんどない。周囲の身体的幸福感など自分自身のものと同様に論ずるに値しない。同様に周囲の信念や生活習慣を顧みることもほとんどなく、そのためしばしば彼は非道徳で思いやりのない怖いもの知らずの人間とみなされる。

(中略)

しかし彼はどうしても新しい可能性を追うのに急なあまり、今植えたばかりの畑を見捨ててしまい、その収穫は他人の手に渡ってしまう。結局のところ彼の手元には何も残らないのである。

(みすず書房 C.G.ユング著 『タイプ論』p396-398)

 

まだまだたっぷりの量の解説があるけれど、ほとんどと言ってよいほど的確に私の傾向を言いあてている。自分のことを酷い奴、愚かな奴だなあとも思う。また、自他の境界があまりにも明確になり過ぎているきらいがある。でもちゃんと周囲に「私は冷たい人間です」と告知義務を果たしている(苦笑) 情熱的で熱い男ではあるけれど冷たいんだよね。

こうして自分の特質や傾向を内省的に見つめ直し、社会的に、何が自分に向いているのか向いていないのかを客観的に知ることができる。

しかしこのままで終わってしまうと自分は何も変わらない。傾向がどんどんエスカレートしていくかもしれない。

 

要するに、「構え」なのである。

私の場合で言えばENTP型の構えが中心となって主たるペルソナが造られている。であれば、時と場合によって意図的に「構え」を変更し、ペルソナを変えてゆくことも可能ではないのか。新しいペルソナができることで、それが自分の人格に作用し、自分を変えてゆくことに繋がるのではないか。

ある場面では内向的思考型の構えをつくる。今こうして論考を書いている際には、いくぶん外向的思考型の構えが発揮されてペルソナが造られているのではないかと思うし、哲学書や倫理学の書を読んでいるときには本を鏡の役割として内向性の方にエネルギーが向けられているのだとも思う。

対人関係で実験として、普段の外向性を封印し内向性の構えをとれば、それに伴って別のペルソナが登場するはずだ。「芝居」をすることになる。知人では難しいし良心も痛むので、ビジネス上で新しく知り合う人などに対して試みる価値がありそうだ。どちらにしてもビジネス用の「仮面」では、直観の対極となる感覚(リアリズム)を駆使していることが多いので、内向的感覚型や内向的思考型ならば問題なく新しい構えを造れそうではある。

 

となると、内向性とはどんな感じなのか、感覚優先、感情優先、思考優先はどういう構えなのかについて理解を深め、どういう場面でどの構えが有利に働くのかを事前に考えておく必要がある。

ユングの分析心理学の理論は、自分を知って自分の傾向を生かすことよりも、上述の方向性で実用化したほうが可能性に満ちていておもしろい。と考えるのも外向的直観型だからなのでしょうね。畑に苗を植えたので皆さん収穫してください。(苦笑)

 

 

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