あたしは夜が好き。
数えきれない星たちや月が語りかけてくる、にぎやかな夜。雲におおわれてほとんど何も見えない、黒い夜。暗やみに木の葉が風にゆられて、ささーってささやく、ひみつの夜。雨の音がこの家とじめんを、とんとととんってノックしつづける、人なつっこい夜。みんな好き―――
君はどんな人かしら。
君の年れいはいくつ?小学校にあがったばかりの6才かな?それとも42才のお母さんかな?それとも17才の高校生?もしかすると88才のおじいさんかもしれないね。君がいくつでも、変わらない心ってあるような気がするの。その君の心にあたしもいるわ。
夜といっしょにいると心がうるおうの。なぜかは知らない
君はどこに住んでいるの?氷がたくさんあるグリーンランドかな?それともライオンさんや象さんがいっぱいいるアフリカかな?それともアジア?もしかすると地球の外かもしれないね。君がどこに住んでいても、今このときだけは、君と同じところにあたしもいるわ。
ジュンはすやすや寝ちゃってる。だからあたしは夜をひとりじめ
君がいる“とき”はいつ?西れき2020年にいるのかな?それとも2038年にいるのかな?それとも3597年?もしかすると西れき8264年にいるのかもしれないね。君がいついても、君が今いる“とき”、あたしもそこにいるわ。同じ“とき”にいるのよ。ふしぎね。
夜が言うの。ぼくさびしいって。そんなとき、あたしは夜を抱きしめる
君に、ちょっと想像してほしいことがあるの。今あたしは君といっしょにいる。そんな君と同じように、ぜんぜん違うところで、ぜんぜん違う時に、ぜんぜん違う年れいの、君がぜったいに会うことのできない人の世界のなかにも、あたしはいる。このつながりのことを、君はどう思う?どう感じている?
少しだけ自己紹介をさせてね。あたしは猫。なまえはトワよ。ほとんど黒に見えるけれど、深い青むらさきいろの毛なみが自まんなの。目はブルー。あたしのパートナーはジュンという人間の男の子。
あたしもジュンもわき役に過ぎないわ。
主役は君よ。
さあ、一緒にでかけましょう。
人間という銀河への、ミステリアスな旅に―――