竹内整一先生の訃報に接して


倫理学者の竹内整一先生が9月30日に逝去された。10月5日に報道されていて、私は今日気づいた。私の愛読書『「かなしみ」の哲学』は、何度も何度も読み返している。とても良い本だと思い、別に3冊購入し3人のかたがたに贈ったほどである。他には『「おのずから」と「みずから」のあわい』『自己超越の思想』の2冊を所有している。

「日本」にたいして、感性と情緒によって触れる、そのときに生じる心の潤いがなぜ起きるのか。竹内先生の本は、心の潤いを感じさせてくれるとともに、その理由の考察へと導いてくれる。「かなしみ」や「はかなさ」は、欧米価値観が浸透してきた現代日本人的にはネガティブな印象を受けるのかもしれないが、近代までの日本人はむしろそれを肯定してきた。「かなしみ」や「はかなさ」は、人生の醍醐味であり深みでもあり、避けようとするのではなく、逆に積極的に「かなしみ」と「はかなさ」のなかに潜む「情(こころ)」と「感じ」を味わおうとすることを、竹内先生は私に教えてくれた。

私淑していた師のひとりである竹内先生の訃報に接して、自分の命のあるうちに学恩を未来の人々へお返しせねばならないと、身の引き締まる思いである。

 

 

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