星の王子さま(1)―Prologue


『Le Petit Prince (星の王子さま)』

Antoine de Saint Exupéry サンテグジュペリ(1900-1944)作

 

1943年に出版されたこの書は現在、200か国以上の言語に翻訳され、世界的なロングセラーとして多くの人たちに愛読されている。日本語版も20社を超える出版社から刊行されており、それぞれの邦訳を楽しむことができる。

「少年だったときのレオン・ヴェルトに」と宛てられた同書冒頭の一節にはこうある。

「昔その人が子供だったその子供に、この本を捧げることにしよう。おとなはみんな、はじめは子供だった(しかし、彼らのほとんどはそのことを覚えていない)。

サンテグジュペリは読者へメッセージを送る。「いまの君のこころに、君が子どもだった頃のあの無垢な気持ちがどこかに残っていないかい?」と。

この問いかけによって想起される何かがあって、読者の胸を打ち続けていることが、今なお世界中の人たちに愛読されている理由ではないか。

 

数年前になりますが、以前に続けていたブログサイトで『星の王子さま』について幾つかの記事を書いたことがあります。

パソコン内に記事のログはあると思うのですが、量が多過ぎて見つけるのに骨が折れることがひとつ。以前に書いた自分の記事を読まずに今あらためて読み直したらどうなのかなという興味もある。そうした理由もあって、いまの新鮮な気持ちで、この著書にかんする私の内面価値をアップデートするのもいいかなと考えました。つらつらと論考を書いてみたいと思います。

『星の王子さま』をリクエストくださり良い機会を私に与えてくださったYさんに感謝します。

 

論考を書くにあたっては以下の仏日対訳本から引用します。

第三書房版 『フランス語で読もう 星の王子さま』訳 小島俊明

 

上記に述べたとおり、この書では人間の無意識に眠る「童児のこころ」を垣間見ることができる。著者においても読者自身においても。分析心理学者のカール・グスタフ・ユングはこのモチーフに「永遠の少年」と命名した。

この書を再度味読すると同時に、大人の男性の無意識にある「永遠の少年」傾向の考察をしようと思う。女性のかたで勘の良いかたは全ての男性の一面に無邪気な子供の影をみることができるかと思いますが、男性自身ではなかなか気づかない人もいるようだ。この傾向が強い男性もいれば、大人として成熟し、この傾向がほとんど見られない現実的な男性もいるのかもしれない。

 

無意識の分析心理学については下記の書を考察の対象とし引用します。

カール・グスタフ・ユング(1875-1961)著 『元型論』
マリー=ルイズ・フォン・フランツ(1915-1988)著『永遠の少年/「星の王子さま」の深層』

 

フランツ女史は1934年よりユングに師事し、ユング派の分析心理学者として終生にわたって無意識心理学の研究に携わり、チューリッヒ・C.G.ユング研究所で講師を務めた。一番の弟子とされ最もユングから信頼された彼女は、数々のユングの著書の編集に携わり、師弟関係というよりも後期においては共同研究者であった。ユングの死後はその仕事を引き継ぐとともに、彼女独自の研究による数々の書を著した。

 

なお、「永遠の少年」というモチーフは、現代の心療内科が、トラウマを克服できない患者に名づけた「アダルトチルドレン」とはまったく異なる。こちらは男女の性差はなく、「永遠の少年」は男性だけという違いもある。

男性諸氏にとって「永遠の少年」傾向を自分のテーマとしてとらえた時、耳が痛い弱点として克服しようとするのか、魅力的な個性として活かしていこうとするのかはその人次第と言ってよいでしょう。

私は活かしてゆくほうをメインとします。

「永遠の少年」についての考察は私にとってとても楽しく、かつ、必ず有意義なものになることを確信している。

 

 

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