概念の陰翳


谷崎潤一郎の名著に『陰翳礼讃』がある。私のiPhoneには「青空文庫」のアプリがあり同書をダウンロードしてある。移動中の電車の車内で何度も読み返す率が最も高い本だ。

日本の美について、いや、日本人が何に美を見出してきたかについて、西洋文明のそれと相対比較しながらあぶりだしている。西洋は光の美であり、日本は陰翳の美である。乱暴に言ってしまえばそういう主旨だ。

同書の最後にこう書かれている。

尤も私がこう云うことを書いた趣意は、何等かの方面、たとえば文学藝術等にその損を補う道が残されていはしまいかと思うからである。私は、われわれが既に失いつつある陰翳の世界を、せめて文学の領域へでも呼び返してみたい。文学という殿堂の檐(のき)を深くし、壁を暗くし、見え過ぎるものを闇に押し込め、無用の室内装飾を剥ぎ取ってみたい。それも軒並みとは云わない、一軒ぐらいそう云う家があってもよかろう。まあどう云う工合になるか、試しに電燈を消して見ることだ。

 

さて、これは「言葉」と「概念」についてもそう言えはしないか。

電燈とは言葉である。

 

 

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