「思考の方法論」についての探究


この4日間、「宗教と価値観形成」について考えてきたが、宗教にかんする思考方法についても考えてきたと言える。むしろこちらのほうが重要であり、先に考えるべきだったかという思いに駆られた。そもそも何かについて哲学的探究をする際には思考が必要不可欠である。「思考」という概念にたいする哲学的探究へのアプローチともなり得そうな「思考の方法論」について今日は考える。

私が4日間のあいだに行っていたのは、テーマについて思考する前段階としての分解と分類であった。これは思考方法として、フレームワークを行うために欠かせない段階である。宗教理解のための分類と、宗教と価値観が相互に影響しあうことを理解するための分類について、知恵を絞って考えてみた。そして私の分類作業が未熟であり不完全であることに気づいた。まず、思考の方法の一部として、「分解・分類」を充実させようと考え、今日の断想に至った。

思考するための分類の分類について体系的かつ網羅的に整理する。

 

思考するためのフレームワーク分類

1.対象限定、範囲で分類

(1)定義: 対象の決定、限定とその定義、概念の定義
(2)物理的範囲: 物質や物体、個と集合、空間、自然の現象
(3)観念的範囲: イデア、表象、形而上的領域、哲学的テーマの範囲

2.時間軸で分類

(1)起源: 対象の起源、始原
(2)過去: 歴史的出来事、過去の状態、経緯、プロセス
(3)現在: 現在の出来事、状況、短い時間の幅をもつ今
(4)未来: 推理、予測、未来の可能性
(5)永遠普遍: 時間を超越した普遍的概念

3.認識で分類

(1)主観的: 経験や自己価値観から生じる解釈、純粋主観と間主観性
(2)客観的: 普遍性や科学性を意識した解釈、多様な客観形態
(3)知覚的: 五感感覚によっての認知、
(4)直感的: 思考を経ずに無意識的に意味と価値を洞察
(5)感性的: 美的、感情的な要素から対象を認識
(6)論理的: 因果律を用い合理的に結論に導く思考と推論が伴う解釈
(7)多角的: 多様な視点から観察し思考することを目的とした認知
(8)多元的: 視点より一段階高い視座による多元的認識
(9)批判的: 情報を鵜吞みにせず吟味し省察するための解釈
(10)表現目的的: 表現目的を前提としたそのための多様な認識

4.概念で分類

(1)定義: 客観的および辞書的定義、主観的および個人的定義
(2)名詞的: 物の名前や存在、固定的なものごと
(3)動詞的: 行動や過程、動きのあるものごと
(4)形容詞的: ものごとの特徴や状態
(5)現象的: 外面や表層へのものごとの現れ
(6)本質的: ものごとを固有に成立させている深層の根本要素や原理
(7)内包的: その概念の内部に有するもの、抽象的な意味内容
(8)外延的: その概念を適用できる全範囲、具体的なものごと
(9)イメージ的: 非言語的な概念イメージ

5.価値観で分類

(1)道徳倫理的: 人徳、人格、正義、罪と罰、法、善悪的な価値
(2)美的: 美と醜、芸術的な価値、人生美学的な価値
(3)実用的: 有用性、損得の功利性、効率性、実利的な価値
(4)知能的: 知識、学問、教育、学術的な価値
(5)感情的: 喜怒哀楽、幸福、精神的な充足、内的な価値
(6)環境的: 気候環境、風土、生物、地球、大自然の価値
(7)社会的: 公平、協力、共同体、社会的利益の価値
(8)文化的: 伝統、文化、歴史の価値
(9)思想的: 西洋思想、イデオロギー、東洋思想、日本思想、個人思想的価値
(10)その他: 利己的と利他的、自己実現欲求的、幸運と不運の価値

6.個別性質で分類

(1)定常性: 変化しない性質、秩序、安定性
(2)動的性: 変化する性質、高い自由度、流動性、変容
(3)整合性: 普遍性、統合、順応
(4)矛盾性: 止揚可能性、反発、創発
(5)不確実性: 予測が難しい性質、不確定性
(6)予測可能性: 予測が可能な性質、確定性
(7)指向性: 志向性を含む、対象へ向かう性質と対象
(8)持続性: 継続、発展、持続期間の予測
(9)目的性: 目的的性格を有するもの及びその目的、または無目的
(10)その他: 共有可能性

7.関係性で分類

(1)主従: 支配と服従、上下関係
(2)主客: 主体と客体、観察者と観察されるもの
(3)相互: 相互作用や相互影響、引力と斥力
(4)対立: 競合や対立、対立する側面
(5)協力: 協力や連携、共同作業
(6)依存: 依存や相互依存、相互に影響しあう関係
(7)等価: 平等な関係、同じレベルでの対等性
(8)内外: 内部と外部の関係、境界
(9)類似: 類似性やアナロジー、共通の特性
(10)その他: 全体性、統合、融和、求心性と拡張性

8.人間心理で分類

(1)目的的志向: 効率性、焦点、決定力
(2)非目的的志向: 創造性の促進、柔軟性
(3)無意識的な心理: 直感、インスピレーション
(4)自己意識: 自己認識、自己評価、自己受容、自己肯定、自己成長
(5)欲求: 自然欲求、価値観による欲求、向上心
(6)モチベーション: 動機付け、情熱、心意気、目標
(7)判断と意志決定: 選択のプロセス、決定の根拠
(8)リテラシー: 事実誤認や虚構、危険の察知、情報管理
(9)社会的影響: 他者との関わり、影響の受容と発信
(10)その他: 愛、夢とファンタジー憧憬、安心と不安、依存心

 


上記分類については過不足は当然あるしジャンル分けも試行錯誤していくことになると思う。あくまでたたき台である。たたき台にしてはやり過ぎの感があるけれども。

思考方法の第一段階の分類後、次の段階に進む。それぞれの分類内容の相対比較検討と関連性、相互影響性、アナロジー、組み合わせ、表現に使うメタファーの研究、具体事例の調査と検証、逆説的批判思考、フィードバックと議論、無意識領域の活用、仮説の立案、実行、イマジネーション、哲学的な価値創造、表現・発現全般、文学や芸術の創作など、多岐にわたる思考方法が待つ。

なお、今気づいたのだが、上記メタ分類のひとつひとつが、「思考」と同等かそれ以上に重要な、私の哲学的な原理探究のテーマになっている。1から順に、存在原理論、時間原理論、認識原理論、概念原理論、価値観原理論、性質原理論、関係性原理論、人間心理原理論。

なんだか人類の知的活動全域を、体系的かつ網羅的にフォローするようなことになってきた。

 

 

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